交通事故が発生すると、事故の加害者は被害者に対し、ケガの治療費や慰謝料、自動車の修理費用といった損害賠償を支払う必要があります。損害賠償額は事故の状況やケガの程度、過失割合などによって異なりますが、場合によっては1億円を超える多額の損害賠償を請求されることも珍しくありません。

自賠責保険や任意保険は、事故の被害者・加害者双方を金銭面で守ってくれるものです。しかし、強制加入である自賠責保険に対し、任意保険の加入はあくまで任意です。重複して加入する必要はあるのでしょうか。

今回は、自動車の保険は自賠責保険だけでなく任意保険にも加入すべきなのか、交通事故の補償と関連づけながら任意保険の必要性について解説します。

自動車の保険には、強制加入の「自賠責保険」と任意加入の「任意保険」があります。自賠責保険は法律によって加入が義務付けられているため、自動車を所有するなら必ず加入しなければなりません。

 

一方、任意保険には加入義務がありません。しかし、損害保険料率算出機構の資料によると、多くのドライバーが任意保険にも加入しているのが実情です。

 

●任意自動車保険普及率（2019年3月末）

用途・車種	対人賠償	対物賠償	搭乗者傷害	人身傷害	車両保険
自家用普通乗用車	82.6％	82.6％	30.7％	81.3％	61.6％
自家用小型乗用車	79.0％	79.0％	27.5％	77.0％	51.4％

出典：損害保険料率算出機構 『自動車保険の概要2019年度（2018年度統計）』

 

このように、交通事故の相手への補償である対人賠償や対物賠償、自分自身や同乗者への補償である人身傷害は、80％前後の高い加入率があります。なお、搭乗者傷害は人身傷害に上乗せして補償を手厚くする保険なため、加入率は低めです。

 

自動車を所有する人の多くが任意保険にも加入する理由は、自賠責保険だけではカバーしきれない補償を任意保険が補ってくれるからです。自賠責保険では基本的な対人賠償のみが補償され、限度額も設定されています。被害者の救済が目的なため、人身事故のみに適用し、物損事故は対象になりません。

自賠責保険では、以下の3項目が補償されます。

 

損害の内容	支払限度額
死亡による損害	3,000万円
後遺障害による損害	後遺障害の程度により75〜4,000万円
傷害による損害	120万円

出典：損害保険料率算出機構 『自動車保険の概要2019年度（2018年度統計）』

 

このように、自賠責保険から支払われるのは最高でも4,000万円と限度が決められています。

 

交通事故の対人賠償は、1億円を超えることも珍しくありません。交通事故の相手が死亡してしまい、1億円の損害賠償を請求された場合、自賠責保険から支払われるのは3,000万円までです。もし任意保険に加入していなければ、残りの7,000万円は自分で工面する必要があります。

 

任意保険の対人賠償は、無制限のプランと制限付きのプランがあります。無制限のプランを選んでおけば、高額な損害賠償を支払うことになっても対応できるため、ドライバーにとっては安心感があるでしょう。万一の交通事故に備えて、対人賠償は無制限のプランを選ぶことをおすすめします。

自動車を運転する場合、どれだけ安全運転をしていても事故の可能性が100％ないとは言いきれません。任意保険は加入義務がないため、これまで一度も事故を起こしたことがないから大丈夫だろうと考える方もいるかもしれませんが、自動車を運転する限り事故の可能性をゼロにすることはできないのです。

 

自賠責保険で補償されるのは最低限であり、事故の状況や被害者のケガの程度によっては自賠責保険だけでは到底まかないきれません。任意保険に加入していなければ、自賠責保険の上限を超える分はすべて自己負担となります。

 

任意保険に加入すると当然保険料を支払う必要があり、自動車の所有コストを減らすために加入を見送る方もいるでしょう。しかし、万一の事故の可能性を考えると、自動車を持つ上では必要なコストともいえます。リスクを少しでも減らすために、任意保険への加入をおすすめします。

強制加入の自賠責保険と違い、任意保険への加入はあくまで任意です。しかし、任意保険に加入していない場合、自賠責保険の上限額を超える分は自分自身で支払っていかなければなりません。

 

自動車を運転する限りいつどこで交通事故が起きるかわからず、「自分は大丈夫」という保証はどこにもありません。自賠責保険の補償だけで事故の損害をまかなうにはあまりに心もとないため、任意保険にも加入することを強く勧めます。

 

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